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「ハシ先!今度のテストどんな感じ!?」
「おねがぁい!あたしお小遣いかかってんだって!」
昼。時刻は12時47分。クラスの中は、もう3分で次の授業が始まることもあり、人が多くて騒がしかった。
「はぁ~?お前ら聞き方が直球すぎるだろうよ。それで教える先生がどこにいんだってんだよ」
教壇の上の机に資料を広げていた”ハシ先”は、女生徒たちに囲まれていた。
「えー!ケチー!お願い!」
「ねぇ!選択問題多い!?記述無理だからやめて!お願い!」
「ぶー。残念でした。もうテスト問題は完成しております」
「えー!!!」
えー、の大合唱がクラスに響き渡る。
それと対を成すような、カタカタという小気味良い静かな音を出し続けている一点が、クラスの中に存在した。
カタカタカタ。
ッ、ターンッ。
「木内ちゃん、なにやってんの?」
一人の女生徒が音の主に笑顔で話しかける。
「ん、なんか」
教室の窓際一番後ろの席に座る木内は、画面から顔を上げずにそう答えた。
「えー、なんかってなによ。教えてよ」
「んんん、言ってもわかんないと思う」
カタカタカタッ、ターンッ。
木内は手元のキーボードを見ずに、すごい勢いでタイピングをしていた。彼女の視線が、パソコンの画面の左から右へ流れるを繰り返す。
「なになにっ?またパソコン?」
後ろからもう一人女生徒が木内の机へ集まってきた。
「何やってるの?」
「ホームページのコーディング」
「こ、こーでぃんぐ…?」
「……」
カタカタカタ。
「…もしかして木内ちゃん、機嫌悪い?」
「別に」
「……」
二人の女生徒は言葉に詰まって、二人で顔を見合わせる。
キーンコーンカーンコーン。
授業開始の合図だ。時刻はいつの間にか、12時50分になっていた。
「あっ、時間だ。木内ちゃん、じゃあまたね」
「じゃねー」
二人は気まずそうな笑顔で木内に手を振りながら、自分の席に戻っていった。
カタカタカタ、カタンッ。
パタンッ。
ノートパソコンを閉じて、机の脇に掛かっているスクールバッグの中へと仕舞った。
「………」
およそ30人の生徒が同時に席に向かう忙しい景色の中、ハシ先は、木内を眺め、眉根を寄せていた。
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