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どうして私なんかの普段していることを聞いてくるのか、私にはよくわからなかったのだ。
「そりゃお前、先生が木内のことを知りたいと思っているからだろう」
「え、知りたい?なんで?」
「なんでって…うーん、なんでだろう、仲良くなりたいから?」
「なんですかそれ」
意味が分からず、眉間に皺を寄せてしまった。
「むしろ、意味って必要?」
「え?」
「意味、必要なくないって先生は思うんだよね。仲良くなりたい、相手のことを知りたい、っていう感情は、自然に発生するっていうか。ほら!お前だって今、「なんで?」って聞いてきただろ。それと同じだ」
「ふーん…」
正直よくわからないな、と思う。でも、
「でもさ、ちょっと心があったまったりしない?」
「あ」
「なに?」
「ちょうどそれ、思ってたところでした」
「だろ?」
ハシ先がニカッと笑う。
「だからさ、中村とか横山も、お前と話したいだけだと思うんだよね」
「え」
「時々お前のとこ来てるだろ?」
「えっと、まぁ」
「じゃあさ、パソコンでどんなことしてるのか、詳しく話してみたらいいと思うんだよな。聞いてくれると思うよ、あの二人。だって、聞きたくてお前のところ行ってんだろ?」
「あ、そっか…」
そうだったのかと口に手を当てて考えてみる。そんなこと考えもしなかった。私は、二人の気持ちを無視していたのか。
「まぁさ、今度そうしてみなって。そしたら、なんかいいことあると思うよ」
「そう、ですね…そうしてみます」
私の言葉を聞いて、ハシ先が微笑む。
その優しい顔に、何故だか少しどきっとしてしまった。
ハシ先が教えてくれたこと、周りに目を向けること。
その日から、私の世界は彩りを増した。
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