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「だって、このままいくと偏差値65はいけるかも知れないけど、川井高校は69くらいあるんでしょう?ちょっと厳しいんじゃないかなぁ」
「そんなことない!ちゃんと勉強すれば、この予想されてる偏差値も超えられる!」
咄嗟に語調が強くなる。それに気が付いたのか、母は娘を横目でちらりと見た。
「そうかなぁ」
「そう!」
「……」
母は紙から手を離し、机の上にそっと置いた。
「でもさ、有紀は部活もしてるんだし、ペース上げようとしすぎちゃうと、多分無理しちゃうことになるのよね」
「う…」
「それに、うちは…私立に余裕を持っていかせられないから、できたらお母さん、公立だと嬉しいなぁ……川井も県立だけどさ、偏差値ちょうどいいくらいの太田高校も考えてみたら?…あっ、いけない、アイス買ってきたんだった」
思い出したというように母は買い物袋を持って、キッチンの冷蔵庫へ向かった。
背中の向こうで、冷蔵庫が開く音が聞こえる。目の前には”61.2”の文字。
わかっているのだ。自分でも。太田高校がちょうどいいことくらい、わかっているのだ。
でも、太田は私にはどうしても魅力的な学校には思えなかった。毎年国立大学には2、3人くらいしか出ていない。それに、「3年間遊んで1年間勉強する高校」なんて揶揄されている。ここでは、私の人生設計がだめになってしまう。そんな気がした。
でも、足りない。部活動も活発な川井に行きたいけれども、現実はそれを認めてはくれないのだった。
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