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「でぇ、木内はどこ受けるんだっけ。公立?」 「公立です」 いつの日か見たのと同じ光景。窓から夕陽が差し込んで、教室はオレンジ色に染まっていた。机と机を合わせて、対面する形で私とハシ先が座る。 「どこ受けるの?」 「……」 私は黙りこくってしまった。 「ん?」 間の違和感に気付いて、ハシ先が顔をあげて私を見る。 「……い…」 「え?」 「川井高校、がいいです…」 「いいですってなんだよ」 ハシ先がククッと笑う。対して私は、無表情で俯いたままだ。 「サイエンス系の高校とかは?考えてないの?」 「はい、普通に、大学進学したいので…」 「へぇ、だから川井」 「あの…」 「なに?」 全てを受け入れるかのような優しい微笑みをしてハシ先が私の顔を見る。ああ、この人はきっと女の人にもてるんだろうなぁ。そう直感で思った。 「でも、全然、成績足りなくて、川井」 「あ、そうなの?」 「お母さんには、太田行けって、言われ、てて…」 喉がきゅうっと熱くなる。自分の話をするということに、慣れていないせいだろうか。 「でも、私は、川井が、よくて…国立進学率もいいし、部活動も、活発、だし……」 ぽつり、ぽつりと話を紡ぐ。 「うん」 それを優しい声で受け止めてくれる。 「私の、人生を、考えたら、川井がいいかなって、思うん、です…でもっ、現実、足りてなくて…っ…太田に行ったら、ダメな人生に、なる気が…して…うっ…」 気が付くと、机の上にはポタリ、ポタリと涙の粒が落ちていた。止めたいのに嗚咽が止まってくれない。みっともない、たかが進路面談で泣いてしまうなんて…――。 「太田行ったら、木内の人生設計がだめんなっちゃうの?」 「わかっ、んないけど、そんな、気がして…」 「思い通りじゃなきゃだめなの?」 「わか…っ、わからないんです…うっ…」 わからないのだ。私には、今後のことなんてわからない。ただ、今出来ることは、後々苦しまなくて済むように、価値のある人生だったと思えるように、いい高校に行って、いい大学に行くことだと思ったのだ。 「でも…そうだな…中学校の頃、俺も人生がどうなるかーなんて、わからなかったな」 俯いたまま泣きじゃくる私の頭に、ハシ先が語りかける。
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