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妻に浮気された旦那に同情しようと試みても、彩香にとっては俊介はまさしく自分を裏切った相手であり、正直なところ、いい気味だ、ぐらいにしか思えなかった。昔愛していた人には幸せになって欲しい、なんて語れる高尚な人間には、到底なれそうもない。
部屋の照明が唐突に消えた。
時間は11時23分。深夜とは言えまだ就寝には早い時間で、照明が消された理由は、これでミーティング終了か、或いは二人して寝室に籠ったか、だ。
彩香はマンションの玄関に眼を凝らした。
はたして蘭子は出て来るだろうか。
出て来ないことを期待し、それに賭けている自分に気づく。それは、このスキャンダルをモノにしたい、というジャーナリストとしての執念だけではなかった。
「さあ、今夜はまた徹夜になりそうね」
努めて冷静を装いながら、彩香はマンションの玄関を見つめた。
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