3.女の敵は女

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 テレビは、今度は国民党の他の女性議員の姿を映し出していた。赤いスーツをスタイリッシュに決めた美貌の蘭子に比べ、グレーの無難なスーツに身を固めた地味な古参議員は、どうしても見劣りがする。  新代表の信任も厚い女性の蘭子に先を越されかねない男性議員は当然面白くないだろうが、マスコミへの露出が多い若輩議員の蘭子に対する女性議員の嫉妬も否めない。  ひょっとして、蘭子を売ったのは、同僚女性議員だろうか。  ふとそんな気がして、彩香は溜息をつき意見した。 「女の敵は女、とか男性は面白おかしく言うけれど、男にだって嫉妬深くて他人の足を引っ張る人がいるじゃない」 「そりゃそうですけれど、あいつは気に食わないやつだ、と思ったら、男は単純だから顔に出ますよ。女性は表面上は仲良さそうにしていて、その実裏で相手の悪口を言う、みたいなイメージ、ありますよね」  賢太の観察に同意しないでもなかったが、彩香は軽口で反論した。 「賢太君はよっぽど陰湿な女性と付き合っていたのね」 「そういうことじゃないですけれど。・・ま、彩香さんはわかりやすくていいですよ。顔を見れば何を考えているか手に取るようにわかります」 「それって、私は単純な人間だ、って言いたいわけ?」  彩香が怒った振りを装おうと、賢太はあわてて真面目な表情を取り繕った。 「単純だとは言ってませんよ。・・でも、純情ですよね。いい意味で」  年下の男にバカにされただけかもしれなかったが、彩香は急に自分のことをこの男に知って欲しくなった。たとえそれで嫌われることになるとしても、だ。 「それはあなたの眼が節穴だ、ってことよ。だって私は綺麗事を言いながら、その実腹黒いのですもの。今回のネタだって、大きなスクープを成し遂げたい、ということだけじゃない。・・心の底では、蘭子に復讐したい、って思っている」  彩香の突然の告白に、案の定賢太は驚きを隠せないようだった。  これで、この若いイケメンカメラマンに呆れられ嫌われたに違いない。これ以上追及されたくなくて、彩香はビールを一気に呑み、ほろ苦い味が口いっぱいに広がった。  賢太が低い声で尋ねてきた。 「それって、大学で同窓生だった、って事実と関係あるんですか?」 「あるわ」 「じゃあ、彼女に痛い目に遭わされた、裏切られた、ってところですか?」 「そうね」
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