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「湊ー、一緒に帰ーろ?」 教室のドアから、ぴょこんと上半身だけを出して、その愛くるしい瞳で俺だけを捉えると、嬉しそうに頬を染めながら、おいでおいでと手招きしてみせる。 HR終わりの多勢が残る教室内の、主に男の目線が一気に佳純に集まった。 「おい、湊。あれは反則だろ。」 「ゾッコンじゃん。羨まし過ぎる。」 「天使か。」 佳純には聞こえないトーンで口々にそう言う仲間に、俺はちょっと苦笑い。やっぱり、もうちょっと甘さ控えめにしてくれないかな…。胃がもたれそう…。 それに俺はもう、帰りたくても帰れない運命なんだよ…。 しょうがなく手招きに応じて、入り口にいる佳純の元まで向かうと、俺にしなだれ掛かるように接近してきた。 「悪い、佳純。俺、再来週いっぱいまで補習あんだわ。」 「えー、マジー?ショックぅ…。」 「ごめんなー。」 「じゃあ、真里亞達と帰るぅ。夜は逢える?」 「あー、電話する。」 「待ってるから。頑張ってね。」 哀しみアピールを欠かさずに残してから、ヒラヒラと舞う蝶のように佳純は自分のクラスへと戻って行った。
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