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「先生ーっ、俺を見捨てないでぇー!こないだまで、あんなに俺によくしてくれてたのにぃー!」
2限目終わりの休み時間。
職員室全体に響き渡るように、わざと席に座っている担任(41歳独身のおっさん)の足にしがみついて抗議のパフォーマンス。
「足立先生…、何しでかしたんです?」
たまたま近くを通った1年の英語担当の永井先生が、白い目で俺達を見下ろしながら聞いてきた。
「いや、違うんです。こいつの言ってるのは追試の事で…、お、おい、桜木!おまえ紛らわしい言い方するな。」
しどろもどろになりながら、担任足立は俺にしがみつかれている左足を揺さぶって振り解こうとする。
そんなにまでして慌てて弁解している理由は、足立がこの、永井先生(多分20代後半?)に密かに片想いをしているから。そして俺は、そんなクラス全員にモロバレしているような共有事項を餌に、今回の追試を免除してもらうよう只今説得中。
「だってあんまりもに酷い仕打ちを受けたから。」
「酷いのはどっちだ。毎回毎回テストの度に俺が頭抱えるような点数ばっかとって。まさか俺に恨みでもあるのか?」
「先生に恨みはないよ。恨んでるのは数学。俺、アイツとはどう頑張っても仲良くなれない。」
「仲良くならんでもいいから、せめて顔見知りくらいはなってやってくれ。じゃなきゃおまえ、単位足りなくて留年するぞ?」
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