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足立と俺のやり取りを見て、クスクスと笑いながら席に戻る永井先生の後ろ姿を目で追いかけながら、教師がよく使うとっておきの切り札『留年』のフレーズに深い溜め息を浴びせる。 俺と同じように、永井先生の後ろ姿を惚けた顔で見つめていた足立は、俺の呆れ返った視線にようやく気付き、コホンと咳払いをしてこちらへ向き直った。 「いいか、桜木。前回の追試は、全体的に平均点も低かった上に、対象者が多過ぎたせいもあって、仕方なく見送りになったって訳で、それが通例になったわけじゃないんだぞ。」 「じゃあ、今回の対象者は?」 「おまえひとり。」 「マジ?」 「マジ。追試があるだけマシだと思え。」 「…何度やったって一生クリアできねーよ。」 「他教科平均点以上の癖に、何を甘えたことを。」 「数学はムリ。本気で意味がわからない。」 「仕方ない。俺が個別指導してやろうか?」 「おっさんに個別指導されても、むしろやる気削げるって。」 「おまえなぁ…。グダグダ文句言ってる間に勉強しろ。」 「先生は俺が留年してもいいわけ?仮にも担任だろ?」 「仮ってなんだ。担任だから言ってるんだろーが。ったく、仕方がない、アイツに頼むか。」
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