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軽度の監視や束縛も、細けぇな、と面倒に思う疑いの目や嫉妬も、まだ付き合い始めだからと自分で自分に言い聞かせて、敢えて見て見ぬフリ。話題を変えてスルーに限る。
「それよか、どうした?なんかあった?」
「あ、そうそう。今日ね、真里亞達と駅前に新しく出来たパンケーキ屋さんに行こうかって話になってー、本当は湊と一緒に行きたいんだけどー、湊甘いモノ苦手でしょ?」
「あぁ、そーゆーことなら行っておいでよ。」
「いいの?怒ってなぁい?」
「怒るわけないじゃん。楽しんでおいで。」
「本当?やっぱ湊って超優しいー!ありがと!明日は一緒に帰ろうね。」
そう言って佳純は、人目も憚らず俺にギュッと抱きつくと、タイミングよく鳴った予鈴と共に、嬉しそうに自分のクラスへと戻って行った。
自然に可愛さを振り撒けたり、たまに我が儘を言ってみたり。多少甘ったるい気もあるけれど、『彼女』としては何ら申し分ない。
周りからも羨ましがられるし、連れて歩けば自慢にもなる。
これ以上の幸せは、ないはずなのにー。
たまにふと、わからなくなる時がある。
俺って、本当にコイツのこと好きなのか?って。
確かに、『可愛い』とか、『綺麗』とか、当たり前のように思うし、言えるし、我慢や無理をしてるわけでも更々ない。
それなのに、気持ちがどこか満たされていないような気がするのは、どうしてなんだろう…。
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