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「こら桜木!サボるつもりか?」 ぼんやりと考え事をしながらブラブラ歩いている内に、どうやら本鈴が鳴り終わっていたらしく、ちょうど次の授業の古文の先生が教室の入り口で俺を見つけて声を掛けてきた。 はいはい、と急いで席についた俺を確認してから、古文の先生は堅すぎて退屈な授業を開始する。 この授業が終われば、あとはもう下校時刻。 いつもなら、帰宅部の佳純と一緒に寄り道しながら帰るか、たまにしか顔を出さない部活に出て、気ままに鈍った体をほぐしているか、そのどっちかの予定だったけれど、今日はいつもとは違う。 再来週の追試に向けて、苦痛の補習時間がやってくる。 出来ることなら出たくない。誰かに代わって欲しい。今すぐ全部投げ出して帰ってしまいたい。 だけど俺をそうさせてくれないのは、『留年』を武器にして脅す足立の呪い。 俺に個別指導してくれるって、足立以外誰の事だろう? おっさん以外、って条件を尊重してくれるなら、他の数学担当は全員足立よりも年上のおっさんだから違うだろうし。他の理系でおっさんじゃない先生なんて、思い付く限りではいないはずだけど…。 そんなことを考えていた俺の予想を遥かに裏切るような、想像の範疇を超えた人物がやって来たことで、数学どころか大袈裟に言えば人生までもを揺るがされるような事態になるとは、この時の俺は全くもって思ってもいなかった。
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