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 新しい年を迎えたばかりの街の空気は冴え冴えとしており、人がたくさんいるにもかかわらず、どこか清浄な感じがする。  そんな街の中を、年明けセールで商品を定価より安く購入するために山田渚は歩き、目的地であるショッピングビルに入り、エスカレーターで地階へと降りていった。  渚はショッピングフロアの片隅にある占いコーナーに目を向けた。  三人の占い師が横一列に並んで座っている。占い師たちの間には衝立があり、お互いとその客が見えないようになっているようだ。意外と賑わっているらしく三人共に客がついていた。  料金表を見てみる。  総合コース…三一五〇円(二五分)  仕事コース…一〇五〇円(七~八分)  恋愛コース…一〇五〇円(七~八分)  などがある。単品の相談も時間をかければかけるほど料金は高くなっていくようだ。  面白そう…。  普段ならそう思ってそれでおしまいだった。  面白そう…。値段もそれほど高くないし、何より手相を見れる人がいる。  渚は買い物が終わった後に見てもらうことを決意してその場を離れた。  買い物を終えて占いコーナーに戻ってくると、その場は閑散としていた。見慣れた光景だ。渚は繁盛している占いコーナーと言うものを見たことがない。  自分以外に客がいないというのは意外とハードルが高い。  どうしよう、やっぱりやめようかな…。でも、せっかく手相を見てもらえるチャンスなのに…。
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