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 ほんの数分のためらいの末、渚は五〇代後半と思われる占い師の前に腰を下ろした。  「何を見てもらいたいの?」  目の前の占い師に問われ渚は「総合コース」と答えた。  「それじゃあ、この紙に名前と生まれた月日、時間を書いてちょうだい」  占い師は渚と目を合わせることなくB5の半分くらいの大きさの紙を差し出した。  その手はしわしわで装飾品は付けていない。だが爪は手入れがされているのかマニキュアなのかツヤツヤと光っている。  渚は言われたとおりに必要事項を記入していく。生まれた時間まではさすがに分からないのでそこは空欄だ。  占い師に紙を渡すと、生まれた時間が分からないことを残念がっていたので、渚は「朝生まれなんです」と答えた。  「そうなのね、分かったわ。本当は正確な時間が分かった方がいいんだけど」とブツブツしゃがれた声でいいながらも占い師は納得し、「それじゃあ見ていくわね」と卵形のタイマーをセットして渚に時々質問をしながら何かをノートに書き始めた。  その字は乱雑で何を書いているのか分かりづらい。占い師が言った事柄を聞いていないと解読することは不可能だろう。
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