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 「あら、あなた今年はとってもついてるわよ」  占い師が嬉しそうに渚に導き出された運勢を伝える。  何でも去年までは準備期間で今年からは一年間運勢上昇期間なのだそうだ。  「だから何にでもチャレンジしていってほしいわ」  占い師は素早くノートに「チャレンジ」と書き込む。  「ところで、あなた。何を一番に見てほしいの?恋愛とか?」  「仕事…ですかね…」  渚は大学を卒業して既に二年。在学中にアルバイトをしていたスーパーで今も働いている。いわゆるフリーターというやつだ。  目指すものがあって、あえて就職活動せずにフリーターという選択をしたはずなのに、今では何を目指していたのかも分からない。ちゃんと就職活動して正社員になっておけばよかったと、最近では後悔ばかりが募る。  これからどうしたらいいんだろう。  未来は靄がかかり過ぎていて、何にも見えてこない。進んでいくための方位磁針もない。まさしく遭難中である。  「そう…」  占い師はあまり気乗りしない様子だったが、渚にどういう仕事に就きたいのか尋ねた。  「美術系の仕事…ですかね…」  渚はためらいがちに答えた。  「あらぁ、そうなの。美術って?油絵?水彩画?」  おそらく美術系の仕事がどういったものか分かっていないであろう占い師は、それでも会話を成立させるために自身の「美術」の知識から出てくるワードを口にして渚に質問した。
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