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『何こいつ。大口叩いていた割に弱ぇーなぁ』
全身打撲傷や擦り傷だらけでコンクリートの床にうずくまっている俺に、追い撃ちをかけるようにげしげしと踏むように蹴る、ヤツら。
「や……だっ、やめろ……」
『あぁ? よく聞こえねぇなぁ』
彼等はギャハハ、と下品な笑い声をあげた。
彼等のうちの一人が、俺から小さな鞄を奪い取り、財布を出し金をばらまく。
『こいつ、結構金持ってんじゃん。1、2、3……3万円も』
『もう、やめてよ……っ!』
そう声を荒げたのは、俺の大切な大切な、宝物。
何に代えても、何を犠牲にしても、護り通したい存在。
『あ゛? んだオメー、その容姿に免じてボコってないのに、殴られたいわけ? それとも襲われたいの?』
『ひっ、いやあの、お金が欲しいならあたし出しますから、彼はもう勘弁してあげて下さいっ』
「……こと……、……る……な……!」
そんなこと、君がする必要はない、と。
そう言いたいのに、じんじんと身体を痛め付ける傷のせいで、声が出ない。
小さな声で、途切れ途切れに紡ぐのが精一杯だった。
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