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第二章 幸福の終焉
1 憂鬱な誕生日
そうして数え切れない平穏な日常を重ね、スカーレットはとうとう十六歳の誕生日を迎えた。
エドワードへの思いは、未だ胸に秘めたままだ。
義父のスティーヴンとエドワード、そしてスカーレットの家族三人で祝う、誕生日パーティの席。
テーブルに並ぶ豪華な料理を、温かみのあるキャンドルが照らしている。
「スカーレット、十六歳の誕生日、おめでとう。君も立派なレディだ」
「スカーレット、開けてごらん。君への誕生日プレゼントだ」
スティーヴンは上品なチャコールグレーの小箱を、エドワードは白いサテンのリボンがかけられた水色の小箱を、それぞれスカーレットへ差し出した。
「ありがとう、お義父様、お義兄様。育ててくださっただけでも嬉しいのに、こんな贈り物までくださるなんて……」
感極まって、頬を涙が伝う。
「おやおや、泣き虫は相変わらずだな、スカーレット。まだまだレディへの道は遠いか」
たっぷりとたくわえた顎鬚を撫でながら、スティーヴンは笑った。実業家としては厳しいが子どもには甘い彼は、いつもスカーレットの心を明るくしてくれる。
「もう……お義父様ったら。からかわないでください。私、もう大人なんですから。プレゼントは何かしら」
スカーレットはチャコールグレーの小箱を開けた。そこに入っていたのは羽根ペンに使う、緑のインクだった。
「この国では、緑色のインクは平和や誠実さの象徴だ。君には大人になっても、何事にも真摯に向かい合って欲しいと思っているんだ」
まっすぐにスカーレットを見つめ、スティーヴンは言った。
義父らしい生真面目な贈り物に、スカーレットの頬が緩む。
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