引力の日

5/5
前へ
/5ページ
次へ
エス君も庭先で同じ昆虫を捕獲していた。虫カゴの中に入れておくと夜になっても体が光り続けているのだった。部屋の電気を消しても本の字が読めるほどである。 「なにこの臭い!」母親はエス君の部屋に入ってくるなり顔面を蒼白にしながら叫んだ。「危ないから捨てなさい!」 「なんで? こんな便利な生き物はいないよ。これはアール星からの贈り物だよ」 「爆発したらどうするの!」 「殺さなければいいんだよ」  家のすぐ近くから爆発音が聞こえた。窓を開けると、道路で車が大破していた。道路にいた虫を轢き殺してしまったのだった。  政府は非常事態宣言を出した。  一週間後に迫っているアール星とのすれ違い時に、大量の虫が地球に飛来する可能性があるらしい。    アール星は不気味な虹色で光りながら地球に近づいていた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加