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引力の日
「いつまで遊んでるの! ちゃんとゴミを散らかしなさい!」
椅子に体を固定している母親がそう言うと、エス君は「はいはい」と面倒くさそうに返事をして、窓を開け、ゴミ箱の中身を外にぶちまけた。
ボルトで床に固定されている椅子に座り、背もたれに付いている2本のベルトを肩から腰にかけてX状にきつく固定。椅子の下にもベルトがあり、それを太ももに回して固定した。
「きたわよ」母親は窓の外を心配そうに見つめ「何か忘れていることないかしら」とつぶやいた。
「あ、やばい!」エス君は大事にしていた携帯電話をしまい忘れていた。
もう遅かった。髪の毛は逆立ち、床に固定されている家中の家具がきしみ始めていた。携帯電話はカタカタと震えると飛び跳ねて、天井にへばりついた。血は頭に上り、内臓が口から出てきそうな感覚に襲われる。
家の外に人影は全く無く、各家庭が道路に捨てたゴミが宙に舞い上がり、空に吸い込まれていった。野良猫など存在しない。動物園に捕獲されている動物以外、ほとんどが星に吸い込まれていったのだから。
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