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第七話 救いの無い結末
状況は明らかにアラシとラフェンツには不利だった。アラシの生き残るという発言に疑いを持たなければならないほど、事態は望みを見込めない。
「本当に大丈夫なのか」
疑念は拭えない。
アラシから五十メートルも離れない位置にラフェンツはいた。ラフェンツに魔物は殺せない。その言葉通り一体として絶命している魔物はいなかった。不思議なのはラフェンツと戦った魔物があろうことか自分の仲間を襲っている。
小さな身体を生かして、ラフェンツは魔物から繰り出される爪撃を軽々と交わす。持っている大剣できりつけるマネをするものの、相手を怯ませる程度の攻撃だけで魔物本体に攻撃を当てようとはしていなかった。
怪力を生かして地面を剣で地面をえぐって怯んだ相手のすきをつき、魔物の額に掌を当てる。掌は光につつまれていた。
獰猛だった魔物が急に大人しくなりラフェンツのいうことを聞き始める。
魔物と並んで戦う姿を見ていると、身長を越える大剣を軽々と片手で持ちあげる様子はどちらが化け物か分からない。味方する魔物の数が増えるほど、小柄な体で戦う姿は際立った。
「怖くないよ、大丈夫」
にっこり笑うと魔物はその笑顔に魅了されたようにラフェンツへの攻撃をやめる。その光景は異様なものだった。相手を殺さない戦い方はダークエルフの特性上ありえないことだ。
ただ不気味なのは襲ってくる魔物に対して剣を振り上げるラフェンツの目だ。誰の目にも分かる殺気が込められている。だが、当たる少し前に瞳の殺気が曇る。剣を振り下ろす表情は楽しそうなのに攻撃が当たってしまいそうになると痛々しい表情をしていた。瞳は落ち着かず、常に動きを止めない。
ジンは目を細めて上空から見下ろした。
――危ういバランス。
百年前滅んだダークエルフ達を思いだした。彼らは戦いにこそ生き、その戦闘は非常かつ残虐。生き様をあらわしたような壮絶さがあった。それに比べてラフェンツは……。
「……甘いな」
戦闘を楽しんでいるのは一目で分かる。けれども魔物を最低限傷つけたくないのだろう。だが、隠しきれてはいない。血を見るたびに、攻撃を受けるたびに爛々と輝きそうになる瞳を……増量する筋肉を。
その本能とも呼ぶべき現象を無理に押さえ込んでいる。
魔物を従えることで数が一気に減りだした。
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