第七話 救いの無い結末

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 一方、アラシのいる場所では炎の柱が上がる。  剣に魔法の炎を保ったままアラシは呪文を唱えた。炎の魔法を選んだのは町に火が広がれば、直接魔物を攻撃しなくてもダメージを与えられるからだ。それに魔物とて獣、炎を恐れない訳が無い。兆人を逃がした為、遠慮なく武器を震える。  二人の活躍で無謀に覚えた防衛も何とかなるように思えた。  町の住民は外れの岩山の間に集まっていた。ここに来れば助かると言われて来たのだが、彼らの目に映ったのは到底助かるとは思えない光景だった。  ここ数日ラフェンツが手伝っていた作業場。瓦礫が大分無くなったとはいえ隣町に行けるほどには撤去は進んでいなかった。もたもたとこの瓦礫をよじ登っていれば何れ魔物がここに押し寄せてくる。そうなれば逃げ道はない。 「ちくしょう、あの餓鬼がいたからこんなことになったんだ」  町の人間がわめきたてるのは立てているのはラフェンツのことだ。ラフェンツさえ、いなければと不満は高まっていく。 「そうだあの餓鬼が魔物を呼び込んだに違いない」  口々に騒ぎ立てるが事態が好転するだけではない。ここにいたら、いずれ魔物が雪崩れ込んできて終わりだ。 「こうなったら町へ戻るんだ」 「まだその方が生き延びる可能性がある」  そして町の人間は愚かにもアラシの忠告をやぶり町へと一斉に走り出す。だが、その前に一人の少年が立ちはだかった。  魔物の数は大分減っていた。炎が上がった事で逃げ帰った魔物が大半だ。元々見た目さえ獰猛に見えるが、群れをなしていても人里を襲うなんて出来ない気の小さな魔物だ。牙をむいてきたことが不思議だった。 「やりましたね」  広場の真ん中で顔合わせたアラシとラフェンツは互いに笑顔を見せた。ラフェンツに味方してくれた魔物ももういなくなっていた。 「大丈夫? 怪我してるよ  心配そうにラフェンツは右腕を負傷したアラシに顔を近づける。ラフェンツとて無傷ではなかった。髪はべっとり血で塗れていたし、右腕は折れて足は引きずっていた。アラシよりも酷い傷だ。大半の傷は転んで頭から民家に突っ込み、壁にぶつかって出来た傷だったが。 「平気ですか」  アラシは自分の傷よりも先にラフェンツの傷痕に手を当てた。 「回復魔法は得意ではないのですが」  淡い桃色の光が腕を包む。徐々に傷口が塞がっていくようなことは無かったが、幾分痛みが和らいだ。
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