第七話 救いの無い結末

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 アラシは唇を噛んだ。魔物が襲撃していても、分散していれば助かったかもしれない。  先程、脳に飛び込んできた映像のお陰でアラシは大体の見当をつけていた。魔物が、立ち去った今誰が村人を殺したのか。  そもそも、魔物が雪崩れ込んできたところで、分散していれば早々に町十の人間が殺されることなどありはしないのだ。それを実現させてしまったのは、アラシ自身。逃げろと言葉をかけ、一つの場所に人を集めてしまったから。  剣を引きぬいたままラフェンツはどうしていいか分からないという顔をした。リックは寄生されているとは家、親切にしてくれた少年だ。部屋の落書きだって、リックが母親に話してくれたおかげでこと無きを得たのだ。  剣を向けるのを躊躇っているラフェンツに無情の一撃が加えられる。  アラシは素早く動いた。躊躇はない。庇う様にラフェンツを突き飛ばし、抜いた剣でリックの一撃を受ける。金属のぶつかる音。  子供とは思えないほど重い剣。石の花で強化された筋肉がもたらす力。ダークエルフの血をひくラフェンツならともかく、アラシにこれを受け切る力はない。ぶつかる度に剣先を流すように努めた。  リックの腕に波打つ蔦とリック自身の欠陥。剣を振るごとに、腕が赤く染まった。  石の花に寄生された生物は死ぬしかない。体が花がもたらす負荷に耐えきれず、壊れていくからだ。筋肉の繊維はずたずたになり、欠陥は破裂し始める。噴き出した血がリックを赤く染めていっているのだ。このままいいように操られて、その後は花が種を撒き散らすための栄養として死んでいく。助ける術をアラシはしらなかった。引きぬこうとしても花は宿主を殺す。  いや、知っている。  ちらりとラフェンツを見た。  ラフェンツより傷の程度は浅いといっても利き腕の右腕の力は大分弱っていたし、元々魔法剣士なので腕力事態も強くはない。受けた剣は受け流すことで場を凌いだが反撃するだけの魔力も残っていなかった。  だが、ラフェンツなら……。  そう考えたが、声をかける余裕はなかった。  寄生された生物の身体能力は比較的上がる。上がり続ける。  剣を一撃、また一撃と受けるたびに攻撃が重くなっているのを感じた。次第に剣も単純なものではなく花は学習し違った軌道を攻めてくるようになる。  ついにアラシの剣が弾かれる。  刹那、リックの剣がアラシの身体を貫いた。  それは錯覚だった。
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