247人が本棚に入れています
本棚に追加
朔はもともと口数は少ないし、ふたりでいても沈黙が続くこともある。
でも今続いている沈黙はそういった類のものじゃなくて、次第に居心地が悪くなった私は、観念したようにいった。
「……さっきの忍者の店に、昔のお客がいたの。それで逃げただけ」
「客?」
「Tシャツ姿の男。なんか店の従業員に見えたから」
「あぁ……そいつ。そいつ、山梨の知り合いみたいだったけど」
「えっ」
まさかとは思ったけど、そんな偶然があるなんて、世間は狭い。
「それだけで逃げたの? 山梨から」
「山梨さんから逃げたんじゃないわ」
「似たようなものだろ」
朔はキッチンから出て、ゆっくりこちらに歩いてくる。
最初のコメントを投稿しよう!