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それから大通りに向かう朔の後ろを歩きつつも、頭の中はずっと山梨さんとさっきの男のことでいっぱいだった。
店の奥から出てきたのを見て慌ててしまったけど、よくよく考えたらあの男だって帰るところだったのかもしれない。
そうなると、あと少し我慢すればよかっただけだったとか?
いや、でも……。
「うちに来る?」
「え?」
朔の言葉に意識を引き戻され、前を見ると、いつの間にかタクシーが前にとまっていた。
「俺はどっちでもいいけど」
「あっ、なら……」
気もそぞろで、あまり考えることもなく頷く。
それからタクシーに乗って数十分後。
まだ通いなれたとは言い難い朔のマンションの部屋にあがると、リビングのしんとした空気にほっと息をついた。
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