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「……やけにつっかかるわね。
それならべつに助けてくれなくてもよかったのに」
なにも聞かないで助けてくれたんだと思っていた私は、だんだん朔にもイラついてきた。
ここにいても落ち着かないし、やっぱり自分の部屋に帰ろうか。
稲川にも行く気分じゃないけど、さすがに山梨さんをあのまま放っておくわけにもいかない。
「ごちそうさま。私も一度家に帰るわ。7時に稲川で」
そう言い残して立ち上がった時、朔が片手でリビングのドアを閉めた。
「ちょっと」
「目に見えて態度がおかしくなったくせに、隠されると気になる。なに?」
どうやら朔は逃す気もないようだ。
昔の男のことなんて、朔に言いたくないから黙っているのに、相変わらず女心がわからないらしい。
言いたくないけど、もうどうでもよくなった私はため息をつくと、「昔の客で、昔の男よ」と面倒くさそうに言った。
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