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すると朔は表情をゆるめ、ドアから手を離した。
「なんだ。それだけ」
「なんだって……」
まさかの発言に、私は呆気にとられて朔を見た。
「なにか乱暴されたとか、そういったほうでのトラウマかと思ったから」
「あぁ……」
そんなふうに思われているとは思っていなかった私は、急に朔に対して申し訳ない気持ちが込み上げた。
「そうじゃないわ。ただ昔の男と顔を合わせるのが嫌だっただけ。
でも……朔が気にしていないならよかったわ」
「そういうことなら気にはしないけど、気にならないわけじゃない」
「え?」
「いろんなところに男がいるんだろうとは思っていたけど、真白の元彼を見ていい気分にはならないし。
それにまさかあんな店でまで会うなんて、どれだけ元彼がいるのかと思うと、ため息しかでてこない」
「ちょっと待ってよ、私だってまさかあんなところで会うなんて思わなかったんだから!
それも山梨さんの知り合いだったなんて……」
「まぁ、あの男はあの店のオーナーらしいし、"アヤ"さんの昔の客というのも頷けるけど」
朔は重いため息をついて、ソファーに座る私のとなりに腰を下ろした。
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