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パッパーとクラクションを鳴らすと、山梨さんは朔の前に車をつけた。
「おーおー、お前マジでこの街似合わんな!
ちょっと車止めてくるから、ここで待ってろよ」
「待ってろって、おい、山梨……」
「すぐ来るからー」
山梨さんは言うだけ言うと、すぐに車を発車させてしまった。
朔は大きなアニメの看板の下に置いてきぼりにされて、サイドミラーに映るその顔は不機嫌を通り越してぞっとした。
「や、山梨様っ!」
「大丈夫やって、朔はほんまに嫌やったら来てへんやろー。
なんやかんや言って、あいつも俺らと遊ぶの楽しみにしとんねんって!」
「そ、そうには見えませんが……」
言ったものの、たしかに朔がこんなところにいるなんて……。
まさか……山梨さんになにか弱みでも握られたとか……?
笑顔しかない山梨さんの横顔にひやっとしつつ、車を止め、上機嫌で朔の元に向かう山梨さんの後を、おそるおそる、行きたくない気持ちを笑顔でカバーして歩いた。
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