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次に山梨さんの目に留まったのは、そのビルの奥、細い路地にあった大きな路面看板だった。
「なんやこれ!」と山梨さんが騒いでいるけど、たしかに山梨さんじゃなくても目を引く。
元々キャバクラ勤めでこんな看板は見慣れている私でさえ、思わず見てしまったから。
「忍者喫茶」の文字に、忍者の格好をした女子が、手裏剣を手にこちらを見ている。
「なにこれー!めっちゃ面白そうやん、ここ行こうや!!」
「行きたいならお前だけで行け」
朔が間髪いれずに言った。
さすがに堪らなくなったんだろう。
私も同感だったけど、山梨さんは朔を全然相手にしない。
「なんやねん、お前俺がアヤちゃんとデートするって言ったら、興味ないふりして、どこで待ち合わせか聞いたくせにー。
やから気をきかせてお前も混ぜたっとんのに、えーんか?
お前帰ったら、俺もう一度アヤちゃん口説くで?」
笑う山梨さんに、朔は表情を変えずにため息をつく。
……今の話、どこまでが本当なんだろう。
私が拒否するという考えは浮かばないのか、山梨さんは私の手を取り、朔を追い払う仕草をした。
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