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泰志は泣きながら笑う。千世も表情は笑っていた。心の中ではひっそりと啼泣しながら。
(この時の僕、随分強がってたなぁ)
親を亡くして泣くのは当然のことで、誰かに怒られることなんてない。しかし、無垢な千世はあまりにも無知だったから、ここで強がることしかできなかったのだ。
(でも、そんな僕を廉佳さんが救ってくれたんだ)
二つ年上の廉佳は、千世からすれば小さな大人だった。頼りがいがあって、いつも千世の一歩も二歩も先にいる。それでいて追いつけなくなったらそっと手を差し伸べてくれるような、かっこいいお兄さんだ。
いつの間にか場面が切り替わっていて、泰志の姿は消えてしまっていた。その代わり千世が独り、公園のベンチでうずくまっている。
『はぁ……』
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