第一章

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 溜息をつく、という言葉の本当の意味を知ったのはこの時かもしれない。暗い気持ちを吐き出すように、呼吸をするよりも先に大きく息が漏れる。 『千世ー、そんな所で何してるんだ?』  中学一年生だった廉佳がこちらに向かってくるのが分かる。夢の中なので客観的に見られる分、今とは違う彼のあどけない姿に懐かしさと親しみを覚えた。 『今日は泰志と一緒じゃないのか? 珍しいな』 『うん、ちょっとね……廉にぃはどうしたの?』 (そっか、まだ廉佳さんのこと廉にぃって呼んでたっけ)  夢とはいえ、自分がそう呼んでいるところを見ると、全身がむずむずするような違和感が訪れる。
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