第一章

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 その言葉を、ずっと待っていたのかもしれない。  途端に千世の涙腺が緩み始め、大粒の雫が頬を伝った。 『そうそう。辛い時は泣くもんだぞ』 『ぅん……』 『よく頑張ってきたな』 『う……っ、ぅう……』  頭を撫でていた手はいつしか背中を抱いており、千世の顔は廉佳の胸に(うず)まっていた。その中で千世は恥も外聞もなく泣きじゃくる。今まで誰にも見せられなかった涙をやっと解放できたせいで、いつまで経っても嗚咽が止まらない。  それでも廉佳は、いつまでも、いつまでも、千世の背中をぽんぽんと優しく叩いてくれたのだ。 (この時は何というか……心が救われたなぁ)
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