第一章

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 そう遠くはない過去の話。だけど思い出深いこの日のことは、つい先日起こったようにも感じられる。 (多分、廉佳さんに対する気持ちが変わったのって、この辺りからなんだよね)  そこから先は簡単だった。大泣きした姿を見られたという恥ずかしさもあったが、廉佳に会う度に脈が上がってしまい、顔が紅くなる。しばらく喋っている内に治まるものの、彼の一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)が気になってつい眼で追ってしまう。その端正な容姿に見とれたりもした。そんなことが続き、気が付けば抜け出せない恋の穴に落ちていた。  でもどうして。  廉佳は変わってしまった。そして泰志も。  あの頃のように、無邪気に、睦まじい関係ではいられなくなってしまった。 「そんなの僕……嫌だよ」
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