第一章

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 泰志がまだ千世より進んでいないことに密かに安堵していると、横から注文が飛んできた。 「本当に『初めて』なんだな、そういうの良いねー。次はおでこにキスしてくれる?」 「きききき、キス!?」 「おでこなら簡単じゃん。はい、千世にぃ」  笑みを湛えたままの唇が顔に近付いてくる。視界が暗くなり、吐息が千世の鼻先にかかった瞬間――。 「そこ! 動かないで、すごく良い感じ」  再び廉佳に待ったをかけられ、泰志の動きがぴたりと止まる。 (ち、近い! 唇くっつきそうだよ……)  まだ触れていないのに額がむずむずするし、何よりこんな至近距離に居られては千世の方が恥ずかしい。
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