第一章

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 あんな醜態(しゅうたい)を晒した矢先、のうのうと顔を合わせるにはきまりが悪すぎる。  普通にお礼を言えば良いのか、昨日はやり過ぎだと怒ればよいのか。何パターンか頭の中でシミュレーションしてみるが、どの結果も泰志が軽々しい態度で『でも昨日の千世にぃ可愛かったよ』と言ってくる姿しか浮かばない。自惚(うぬぼ)れているのではないが、泰志が言うことは想像が付くのだ。 「えっと……昨日は、その……」  布団で顔を隠したまま次の言葉を考えていると、いきなり視界が明るくなった。  防御力など皆無の盾を奪われたところで状況はさほど変わらない。千世は今度は枕を引っ掴んでそこへ顔を押し付ける。 「顔見せてよ。昨日の千世にぃ可愛かったんだからさ」  ほら、当たった。 「やだよ。恥ずかしぃ」 「そんなこと言ってると、無理やりにでもこっち向かせちゃうぞ~」 「ぅわっ! な、何して――」
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