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千世より二回りは大きい体格の泰志は、軽々とその身をひっくり返して更に覆い被さってきた。
ベッドのすぐ上にある窓から強い朝日が差し込んで、泰志の髪や睫毛を煌めかせる。
幸い最後の武器であった枕は取り上げられなかったので、千世はそれをきつく抱き締める。 自分の身長が低いことを悩むとこは多々あったが、今ほど弟より細く小さい身体を悔やんだことはない。
こうまでされては逃げようもないので、千世は仕方なく口を開いた。
「僕、あの後どうなったの?」
「だから、千世にぃが寝ちゃったから俺が運んできたんだよ」
「その間、僕一度も起きなかったの?」
「うん。千世にぃにしては珍しく良く寝てたねー。疲れてたんじゃない?」
疲れの原因を作った張本人が何を言っているのやら。
冷静さを取り戻していく脳で回想に耽っていると、次第に廉佳のことが気にかかってくる。
(ぼ、僕…廉佳さんにあんなところ見られちゃって……どうしよう)
いくら千世が『嫌だ』と言わなかったとはいえ、元はと言えば全ての元凶は彼だ。千世も自分にあんなみっともない一面があるなんて思ってもみなかったから余計に廉佳に責任をなすり付けたくなってしまう。
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