第一章

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「ほんとにもう一回寝ようかな」  その場を脱するための口実だったが、何となく弟と顔を合わせたくない今、言葉通り寝てしまうのもありかもしれない。  結局逃げていることに違いはないけれど、やっぱりこんな気持ちのままでは話せることも話せない。不貞寝(ふてね)するには十分すぎる理由だ。と自分を納得させて、さっきまで泰志に侵略されていたベッドに倒れ込む。  今日が日曜日で良かった。痛む腰と気怠い身体、どんよりと重くて暗い気持ちが休息を欲していた。  切ってしまった指の傷は思ったより浅かったようで、もう血が止まっている。  こんな風に、簡単に修復できたら楽なのに。 (あ。枕、下に置きっ放しだった……まぁ、いっか)  まだ眠くはないけれど瞼を下ろす。次に眼を開けたら泰志も廉佳も元通りで、昨日のことは消却されている。なんてことを願いながら。
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