第一章

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 泰志に眼で合図され、これは彼が気を利かせてくれたのだと分かり、千世もそれに話を合わせる。 「そ、そうそう。心配かけてごめんね」 「季節の変わり目は体調を崩しやすいからな。気をつけるんだぞ」  泰志が見ていたバラエティ番組を聞き流しながら新聞を読む祖父が顔を上げる。 「うん、ありがとうおじいちゃん」  柔和な性格の祖父母に大きな影響を受けた千世とは反対に、泰志は父親に似ていると言われることが多い。いつも溌剌(はつらつ)としていて屈託の無い彼は、しかし繊細さに欠けることがたまにある。 「千世にぃ、腰は平気?」 「――なっ…へ、へへへ平気だよ!」 「良かった。あとさ、お昼食べたら英語教えてくんない?」 「ああ、うん。……いや、やっぱりごめん。僕も英語の課題があるんだ」
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