第一章

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         ***  ある夢を見た。  夏空の下、子供が遠くで泣いている。あの声、あの姿。見覚えがある。  泰志だ。  近付いてみるが、幼い彼はこちらに気付くことなく泣き続けていた。 (泰志がこんなに大泣きしてるということは、きっとあの時(・・・)の……)  両親が亡くなった九年前の夏、泰志はまだ八歳だった。だがこの時千世は十歳になったばかり。まだまだ子供だ。  それでも大泣きする弟を見て、自分がお兄ちゃんなんだからしっかりしないといけない、と幼いながらに責任感を抱いていた。 『父さん、母さん……何で、しんじゃったの?』
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