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【17】 月輪
穏やかな沈黙があった。
阿梵詭は静止し、存在というものを超えた処に立っていた。
僕の名を呼んだ瞬間から、殺意というものは、彼の体から消え去っていた。
一瞬、目の前の彼が、幼かった頃の―――無邪気に笑い、いつも僕の側に居た頃の―――彼と、重なった。
爆音が轟き、今まで阿梵詭の背に広がっていた翼が、紅く燃え上がり堕ちた。
万物の根源、不正不滅の存在、宇宙の最高原理……荘厳なる、再生。
強大な力を秘めた闇の翼の真実の姿が今、彼の元へ蘇る。
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