学校

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夏休みが終わると、聖也くんと同じ高校に通う。 新しい制服、指定の鞄。 車で送ってもらえて、聖也くんに案内されて職員室へ。 聖也くんはなんだか先生たちに丁寧に扱われている。 「いちごちゃん、帰りは生徒会室にきてくれる?僕、生徒会長やってるから。案内は…」 聖也くんは軽くあたりを見回す。 先生しかいない。 「私がっ。彼女の担任になる私がさせていただきます。校内の案内をしてから生徒会室へいかせていただきますね」 先生は丁寧に聖也くんに言う。 「そうですね。よろしくお願いします。 いちごちゃん、不安だろうけどがんばってね」 聖也くんは私の頬にその手を当てて、少しいちゃついたふり。 カズくんといるときの聖也くんは女の子なのに、男の子でちょっとどきっとした。 「がんばります。 先生、よろしくお願いします」 私は先生にぺこっと頭を下げた。 私は転入生。 なんとか少しずつ学校に馴染めるようにがんばる。 先生に頼まれたかのように女の子たちが声をかけてきてくれる。 だから最初以外の学園案内はその女の子たちがしてくれる。 泣く子も黙る桐生の人間。 その意味がよくわからなかったけど、なんとなくそういうことなのかと理解する。 先生もまわりも必要以上に親切。 みんなお嬢様やお坊っちゃんなんだろう。 でもそんな人たちも桐生の人間にはひれ伏す。 「桐生先輩の嫁っ!?」 「桐生先輩、結婚しちゃったのっ?うそぉっ。やだぁっ」 なんて普通に友達のように話してくれるけど。 本当に悲しそうにしてくれて、そんなんじゃないんだけどと言いたいのは堪える。 聖也くんはカズくんの前以外は私といちゃいちゃのふりだから。 それに合わせてあげなきゃいけない。 私も聖也くんが大好きな私をつくる。 「あげないよ?」 なんて、聖也くんがカズくんを一人占めする真似で。 だって真似するしか私はどうすればいいのかわからない。 「桐生先輩の嫁になりたかったよぅ…」 「マイ、羨ましすぎ。桐生先輩に憧れる女子多かったのに、夏休みの間にいきなりきてかっさらっちゃうなんて」 「ねぇ?桐生先輩、家だとどんな人?」 私のまわりはひたすら聖也くん、聖也くん。 すごーく女の子にモテる人だったらしい。
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