お屋敷の王子様

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ずっとずっと一人になる覚悟はできていた。 私は火葬場にのぼる煙を眺めながら、これから先のことを考える。 空は嫌味なほどに青い。 雲ひとつない夏の澄み渡った青空。 遠くから蝉の声が聞こえていた。 私は高校に入学したばかりの高校1年生。 誕生日は5月だからもう16才。 私の両親はこの夏に亡くなった。 お母さんは入院をずっとしていて、いつ亡くなってもおかしくないなんて状態になってから1週間だった。 だからいなくなってしまうことの覚悟はできていた。 お母さんも入院することになって、その身辺の整理をしていたし、私も何回もお母さんに言われた。 「マイ、あなたのことは私が昔お世話になっていた桐生さんに預けることにしたわ」 今からいけと言わんばかりに言ってくれて、そんなのいやだった私がやだやだ言いまくった。 「じゃあ、私が死んだらね。私のほうもお父さんのほうもおじいちゃんおばあちゃんいないでしょ?お父さんの弟はいるけど、マイはあの叔父さん嫌いでしょ?だから桐生さんに話してみたの。そうしたらマイのこと面倒みてくれるって」 お母さんはうれしそうに笑う。 もういなくなるってお母さんが覚悟を決めていることが私には悲しいのに。 でも叔父さんは確かに好きじゃなかった。 なんかこわそうで、なんか不潔そうで。 叔父さんにお世話になるしかないのをお母さんが考えてくれていた。 それはうれしかった。 でも私は桐生さんという人を知らない。 そんなところにお世話になるのもどうかと思う。 「マイが高校を出るまで、だから、そんなに気にしなくても大丈夫よ。マイがもう少し大人になったら一人で住めばいいの。それまで、だから」 お母さんは私を何度も説得した。 生きているうちに、話せるうちに。 私が納得するまで、どれだけ時間がかかっても。 そんなお母さんに私は折れた。 それは、お母さんの最後の望みのような気がして、そうするしかないと強く思って。 お葬式が終わると、私は大きな旅行鞄1つの荷物を手にして、その慣れた家を出た。 この家は相続税がかかるからもう売りに出される。 私には帰るところがなくなる。 桐生さんちに行かなければ住むところもない。 落ち込んではいられない。 私は生きなければいけないから。 お母さんとお父さんが生きてねと私に言った。
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