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カズくんは機嫌よさそうに私を見て、聖也くんの頭を抱いて、聖也くんを抱きしめる。
「お金あげるから、どっかいってっ」
なんて言葉と私の前に聖也くんのお財布。
そこからこぼれた一万円札をいただいて、私はぺこりと頭を下げて聖也くんの部屋を出た。
胸が痛い。
淋しい。
お金…もらうためだけ。
私がここにいる理由。
車を出してもらうこともなく、私はとぼとぼと歩いて家を出た。
駅に向かって、お店を見て。
電車に乗って、聖也くんといく予定だった大きな下着屋さんに入る。
聖也くんの胸囲ははかってもらった。
大きいからこういうお店ならあるかなと思ってきてみた。
かわいいのもあるし、セットもちゃんとある。
試着してもらってから買いたかったけど、聖也くんに似合いそうな、聖也くんが喜んでくれそうなセクシーなのを選んで買ってみた。
なんでこんなの買ったのかと見ながら、ちょっと反省して。
今度はまた電車に乗って、お母さんとお父さんに会いにいってみた。
お墓はない。
無縁仏と同じところに骨を砕いて蒔いてもらった。
私もお世話をできないし、法要もできないし。
でもそこがお墓になる。
手を合わせて、そのお墓を見て。
聖也くんに嫌われたら、本当にどうしようもないよってお母さんに泣きつきたくなる。
お義母さんとお義父さんはめったに帰ってこないし、帰ってきても私はお話することもない。
お母さんが生きているうちに、もっとちゃんと桐生さんとはどういう関係なのか聞いておけばよかった。
どんなことを言って私を頼んだのかも気になる。
あんな大きなお屋敷の王子様は私の旦那様じゃないと思う。
お母さんはそれを頼んではいないと思う。
高校を出るまではお世話になりなさいって言われたから。
墓地の段差に座って、他にいくところもなく、時間を過ごす。
まだお金はあるから聖也くんの服でも買いにいったらいいんだろうけど。
それはサイズがわからない。
聖也くんが着たいもの選んで欲しい。
女友達みたいになりたい。
えっちなことは、だからもうしちゃだめだと思う。
私とするときは私が襲わないから聖也くんが男の子になる。
男に生まれたかった。
どうあがいても男になれそうにない背。
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