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「おまえがなついているのはウザいときもあるけど、可愛いと思うよ。俺はいいセックスできるなら誰でもいいんだよ。おまえとするのがいいとは思ってる」
「僕もカズくんとするのは気持ちよかったよ。一番気持ちよかった。……でも、もういらない。体しか求めてもらえないなら欲しくない。
僕には大切にしてあげたい嫁もいる。僕がゲイだからまだ16なのに僕と結婚させられた、ひどい身内が一人だけのかわいそうな子。同情なんかうれしくないと僕がカズくんに思うように思われているかもしれない。それでも僕は彼女を守りたい。僕しか守ってあげられない。
僕もカズくんもそれは愛なんだと思うよ。でも僕の愛はカズくんに引っ張られると壊れてしまう。守りたいのに傷つけることになってしまう。そんな自分に自己嫌悪する。
だから、お願い。もう僕に会いにこないで。僕を抱きしめようとはしないで」
聖也くんは目を潤ませて、カズくんにそんな話をする。
私は私のせいで別れようとしているのがわかって、聖也くんの手をなんとかまたカズくんの手に重ねようとがんばる。
「おまえが俺がそんなのじゃ嫌なように、マイが嫌がってるのもわかってるだろ」
「わかってるよ。だから本当になりたいんだよ。彼氏なんて僕にいたら、ずっと本当にはなれない」
「おまえがゲイな限り無理だろ。
もういいから。さっさと出よう。俺、車できているから俺の車使うぞ」
カズくんは部屋から出ようと歩き出す。
「別れの言葉くらいくれてもいいじゃないかっ」
聖也くんはそんなふうにカズくんの背中に向かって、目を潤ませたまま怒る。
「おまえが俺をいらないものにしようとしてるだけだろ。俺が言うことじゃない」
「僕の気持ちわかっててそう言うんだから、本気、最悪っ。意地悪っ」
聖也くんは悔しそうだ。
カズくんも優しいのに優しくない。
そして私は邪魔なはずなのに、聖也くんが離してくれない。
カズくんについていくように車庫に向かって聖也くんは歩き出して、私は引っ張られてついていくだけ。
車の後部座席に聖也くんに押し込まれるように乗り込んで、カズくんが車を運転する。
「どこいくんだ?」
「下着売ってるとこ。いちごちゃんのパンツとブラ買ってあげないと。自分で買ってこない。僕のブラとパンツ買ってきたりして」
聖也くんは不満げにカズくんに答えて、カズくんは笑った。
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