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暗くなって、終電にはちゃんと帰る。
桐生さんちに着いたのは0時を過ぎてしまった。
玄関の扉は開いていた。
ただいまを言っても誰に聞こえるのかわからない広い家。
「お帰りなさいませ、マイ様」
パタパタと足音を響かせて奥からメイドさんが出てきてくれた。
「ただいまです。遅くなってごめんなさい」
「いえいえ、そんな。ご飯は食べましたか?お食事、ご用意できますよ」
メイドさんはにっこり笑って聞いてくれる。
私は甘えてご飯を食べさせてもらうことにした。
温かいおいしいご飯を食べていると、バタバタと足音。
勢いよく扉が開いたと思ったら、聖也くんがいた。
「いちごちゃんっ、遅くなるなら電話してくれないとっ」
また怒られて、私はお箸をおいてしょんぼりと話を聞く姿勢になる。
「ごめんなさい」
「聖也様、マイ様はお食事中です。お説教はあとになさってください。それに…、マイ様に携帯を持たせないと連絡とりようはないでしょう?」
メイドさんが言ってくれて、聖也くんは私のそばの席に座る。
「説教なんてしようと思ったわけじゃないよ。僕だって探したんだよ。遊園地にいったのかと思ったり、水族館かと思ったり。このままいなくなっちゃったらどうしようって…。ごめんね、いちごちゃん。僕、怒ってないよ。ずっと一緒にいたから携帯必要ないって思ってた。でも…、だから、いちごちゃん、余計に友達と遊ぶなんてこともなかったよね。ごめんね」
聖也くんは私にいっぱい謝ってくれちゃう。
私は頭を横に振ってそんなことないと示して。
ふと思い出して、買ってきたものを聖也くんに差し出した。
「本当にごめんなさい。これ、聖也くんからもらったお金で買ってきました」
「……お小遣い、これからは半々にしよ?僕があげるっていうのもなんか変だもん。……これ、中身…」
聖也くんは袋の中を見て。
慌てたように隠すように袋を背中にまわす。
「聖也様とマイ様は本当に仲が良くあられますね。プレゼント、なににされたんですか?その袋、でも下着のブランドでしたよね?」
メイドさんは声をかけてくれる。
「聖也くんのパンツです。ちょっと際どいの選びすぎちゃったみたいです」
私が言うとメイドさんは笑ってくれる。
ウソはついてない。
私もメイドさんに笑って見せる。
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