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信司は奥さんとの事もあり、口には出さないが、自分を慕ってくれる人を求めている気がした。男女として、心(と身体)のつながりを求めている気がした。そして、それは正に、麻紀も同じだった。麻紀はきっとずっと寂しかったのだが、それに気付いていなかった。それが、夫の浮気を切っ掛けにはっきりと判った。
三度目の食事の時に、ホテルに誘われたが、予感はしていたので、抵抗はなかった。
その時に、何故、少し会っただけの麻紀にフレグランスを渡そうと思ったのか訪ねると、「会った瞬間、自分のタイプだったから、興味を持った」と言った。そして、二度の食事で、何となく夫婦仲が上手くいっているように思えなかったので、三度目の食事の時に思い切って、誘ってみた、と言った。
四度目に会った時、服を見に行こう、誘われた。
これを着てみたら、と言われて渡されたのは、「23区」のノースリーブ、膝丈で、胸元がV字で大きく開いた、白地に鮮やかな赤のシャワードット柄のワンピースだった。
「こんなの、着られません。着たことが無いです」
なるべく肌を露出しない服になれていた麻紀は思わず、断った。
「イイから、試着だけしてみて」
試着してみた麻紀は驚いた。
「似合ってる!」
いつもと全然違う自分がそこにいた。
でも、そのような服を着てこなかった麻紀は、そのままの姿で試着室を出る勇気が無くて、首だけだして信司を呼んだ。
隙間から、麻紀の姿を確認した信司は、バッと試着室のドアを開けた。
「あっ」麻紀は慌てたが、その姿をみとめた店員からも「とても、お似合いです!」と声を掛けられた。
「ほら、似合うじゃないか。似合うと思ったんだ」信司が誇らしげに言った。あと、足下はサンダルにした方がいい。
そう言って、その店にあったサンダルを履かせてみた。
試着室の外にでて、鏡に映すと、全身、足下まで新しくなった麻紀がいた。
「胸元が開きすぎじゃないかしら」胸の谷間がかなりハッキリと判った。
「別に大丈夫だと思うけど、気になるなら胸元だけを少し隠す何かを下に着ればいいよ」
値札を見ると、サンダルと合わせると、7万円ほどになる。
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