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奏真は複雑な気持ちで監視映像を見つめた。このプロジェクトを立ち上げ、今日まで真面目に頑張ってきた社員達の努力が今目の前で、無残に破壊されている。いくら佐野を逮捕する為とは言え、やはり悔しかった。流されるようにこの作戦を決行してしまったが、誰も傷つけずに解決できる方法はなかっただろうか。
考え込んでいる奏真の傍らでは、FBI捜査官が詰めの作業をしていた。どうやら全て終わったらしい。キーボードのエンターキーを弾くなり腰を上げた。
「完了っと。この映像は録画したから、警察にあげるよ。さぁ、いよいよ本番だ。ソウ、佐野が出てくるよ。準備はいいかい?」
「もちろんだ」
大きく頷き返して、奏真は立ち上がった。今更悩んでも始まらない。腹をくくって、奏真に気合を入れた。潜入捜査を始めて、やっとここまで来たのだ。ゴースト・ユーザーを逮捕して、レンと一緒に事件を解決しよう。
緊張でじっとりと濡れた手を揉みながら、奏真はレンの後について出入り口へ向かうと、ガラスの自動ドア越しに倒れている警備員が見えた。それから努めて目を逸らし、傍らの相棒に視線を向ける。
「じゃあ、俺は右側で待機する」
「なら僕は左。佐野が出て来たら確保して、すぐに組織との待ち合わせ場所を聞き出し…」
「警官隊を急行させる、だろ?」
「That's right」
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