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「ソウ、今回はアルコールの所為にはできないよ」
言い訳ならできた。これでも人並みに場数は踏んできたのだ。この程度の窮地を乗り切るだけの知恵はある。これは単なる弾みで深い意味はない―――はぐらかそうとして、奏真はその無意味さに気がついた。誤魔化しようもない。この胸の高鳴りが焦りの所為じゃない事も、全身の火照りが怒りじゃない事も、わかっている。いや、本当はずっと前から知っていた。
奏真は肩の力を抜いて、けれど力強くチョコレートブラウンの瞳を見つめ返した。
俺も、レンが好きなんだと思う。
この一言は、溜息と一緒にそっと飲み込む。悔しいから、絶対に言ってやらない。
「酒の所為にするぐらいなら、今夜ここに来てないよ」
「All right, Mr.Samurai…」
長い睫毛を湛える琥珀色の瞳が、うっとりと細められる。満足そうに微笑むと、美しい確信犯は呪文のように囁いた。
「覚悟はできてるみたいだね…so, are you ready?」
「っぁあああっ…」
肋骨が軋むぐらい背中を反り返らせて、奏真はシーツを握りしめた。これでもう何回目だろう。小刻みに震える腹部に、熱い快感の飛沫が迸る。長い時間をかけてほぐされた体は、既に男の熱塊を受け入れても悦べる程柔軟になっていた。それどころか、卑しくも激しい相手の腰使いに悦び、形がわかる程きつく締め付けて、その脈動を存分に貪っている。
「ふっ…ん、あぁ…」
「くっ…ソウ、ちょっと待って。ハァ…そんなに締めたら…もたないよ」
耳元で甘やかに呻くレンの声すら心地いい。長く続く絶頂感に全身を震わせて、奏真は引きつけを起こしたように荒い呼吸を繰り返した。もう、自分がどれ程の痴態をさらしているのかさえわからない。ただ、何度も突き上げられる熱い衝動に、体も思考も翻弄されるまま、切なげな嬌声を上げるだけ。
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