ー Red Notice ー

41/70

504人が本棚に入れています
本棚に追加
/215ページ
「…ソウ、僕が今、どんなに幸せな気持ちかわかる? 君に触れて、君の声を聞いて、君を抱いて…この瞬間のまま、時間が止まっちゃえばいいのに…離したくない。別れるのが凄くつらい」 「…別れる?」  心地よく胸に響いていた甘い告白の最中、いきなり鼓膜を叩いた別れという言葉。聞き流しそうになったところで、奏真は弾かれたように目を向けた。ベッドのサイドランプが淡く周囲を照らす中で、微笑むレンの笑顔は幻想的なまでに美しいが、どこか寂しげでもある。 「明日、組織の連中を逮捕したら任務は完了だからね。国に帰らないと」 「…!」  胸の中で一際大きく、心臓が脈打った。同時に爪で引っ掻かれたような痛みが襲ってくる。それを相手に悟れないよう、奏真は必死に笑顔を作りながらさりげなく応じてみせた。 「そっか…そうだったな。任務が終了したら、帰国するんだもんな。なんか、俺の中でレンは“八代連”で、北海道の出身で、エンジニアで…そんな錯覚してたよ」 「…ソウ…ありがとう」  その笑顔を、どう表現すればいいだろう。嬉しげな、でも少し悲しげな微笑。泣き笑いにも似た微笑みを美しい顔に溜めて、レンは言った。 「ありがとう、ソウ…僕を“八代連”だと言ってくれて。明日、任務が完了したら僕は一度アメリカに帰るけど、必ずまた、戻ってくるよ。君に会いに、必ず戻ってくる」
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

504人が本棚に入れています
本棚に追加