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「戻ってくるって…」
胸に込み上げる寂さから目を逸らして、奏真は返すべき返事を探した。ずっと一緒にいられるような気でいた夢見心地の意識が、急に残酷な現実へと引き戻される。奏真が自然と拳を握り締めていた事に気付いたのは、手の甲にレンがキスしてからだった。
「そうだ。いいアイディアが浮かんだよ」
ふと視線を向けた先で微笑むレンの顔にはもう、悲しげな影も寂しそうな気配もなかった。あたかも残り少ない時間を惜しむかのように、奏真の拳を優しく撫でながら言いつづる。
「今度はさ、こんなホテルじゃなくて、ソウの家で“おうちデート”しよう! 一日中ベッドの中で愛し合って、お風呂に入って、散歩した後にDVDとか一緒に観るの。どう?」
「ぷっ…ハハっ、何だよそれ」
思わず、奏真は小さく吹き出した。
「いいアイディアとか言うから、豪華客船でクルージングしよう、ぐらいの提案してくるかと思ったのに。風呂入って散歩してDVD観るって、普通じゃないか」
けれど、指摘されたレンは至って真剣だ。微笑みながらもちょっと不服そうな物言いで訴える。
「ソウには普通でも、僕には特別なの」
「え? 」
「やってみたいんだよ、そういう家族的なデート」
「した事ないのか?」
「ない。ずっと一緒にいたいと思った相手がいなかったからね。本気で惚れたのも、本気で手に入れたいと思ったのも全部、ソウが初めてだ」
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