ー Red Notice ー

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「レン、佐野が侵入したら俺達も行くぞ…何してんの?」  ふと視線を流した先で、ノートパソコンを草むらに置いたFBI捜査官は、ピアノ奏者のごとくキーボードの上で指を躍らせていた。楽譜みたいに立てられた画面には、4分割された映像が映し出されている。その映像は、奏真が見慣れたものだった。 「ちょっ、それ棟内の監視映像か!?」 「シィ~、大きい声出すと佐野に気づかれるよ」 「だけどっ、一体どうやって接続したんだよ!?」  画面を見ながら、FBI捜査官が小さく笑う。 「裏技さ。それよりソウ、佐野は?」  忘れてた。奏真は慌てて出入り口に視線を戻した。柱に備えつけられた機械警備の機械に、佐野が自分のIDをスキャンさせている。ライトが緑色に光ったのと同時に、ガラスの自動ドアが開いた。問題はここからだった。当然ながら、警備員は突然の訪問者を断固として拒否しているようだ。  佐野はどうするつもりなのかと、奏真が2人の様子を注意深く見つめていたその時だった。突然、佐野は警備員の背後に回り込むや、取り出したハンカチで警備員の口を塞いだ。 「あっ!」  何か薬品でも仕込んでいたんだろう。暴れる暇もなく脱力した警備員がその場に崩れ落ちた。もはや、外国に逃亡する覚悟を決めた窃盗犯にとっては怖いものなどないらしい。 「警備員がっ…!」 「ダメだよ、ソウ!」  飛び出そうとした奏真を、横からFBI捜査官が制したのは素早かった。画面を見つめる横顔は相変わらず穏やかだ。けれど、その声には一切の反論を許さぬ硬い響がある。 「警備員なら大丈夫さ、死んじゃいないよ」 「でもっ…」 「今は工藤救出が最優先だろ? ほらソウも見て、佐野が開発室に入ったよ」
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