ー Red Notice ー

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 街灯が放つ淡い光の中で、微笑んだ相棒は本当に美しかった。もうすぐ海の向こうへ行ってしまうその笑顔に頷くと、奏真は自動ドアの右側に移動した。深呼吸してから、神経を研ぎ澄ませる。  夜の広場は静まり返り、鈴虫の鳴き声がやんわりと響いている。その音色を聞きながら、奏真が意識を自動ドアの奥へ向けたとき、人の気配が伝わって来た。同じく気配を感知したのだろう、左側でレンが頷く。  奏真は身構えた。出て来た人物が佐野ならすぐに取り押さえられるよう、体制を整えて待つ。  次の瞬間、自動ドアが開いた。  黒いYシャツを着た痩身の人影がドアから出て来る。佐野だ。奏真は身柄確保しようと駆け出したが、伸ばした手が佐野を捕らえる事はなかった。その時には一足早く飛び出していたFBI捜査官が、佐野を後ろから羽交い締めにしていたからだ。 「うわっ!? なんだっ、イタッ」 「Good evening, Mr.Sano」  一体どんな訓練を積んできたのか、FBI捜査官が佐野の腕を後ろに回して手錠をはめたのは素早かった。ほんの一瞬の出来事に抵抗する暇もなく、佐野は何が起きたか理解できない様子で鮮やかな笑顔を見上げている。手錠の冷たい感覚が伝わってようやく、既に自分が拘束されたと気づいたらしい。ギョッと目を剥くなり、体をビクつかせた。 「手錠!? 何すっ…え!? あんた、八代さん!?」  拘束された事よりむしろ、システム管理部の人間に捕らわれた事の方に驚いたようだ。ポカンと口を開けている佐野に歩み寄ると、奏真は一呼吸おいて声をかけた。 「佐野主任」 「みっ、三木くん!?」  向けられた視線は、激しい動揺で揺れていた。それを真っすぐに見返して、奏真はゴースト・ユーザーに手帳を示した。同時に、これまで何十回と口にしてきた決まり文句を厳かに言い放つ。 「三木ではありません。自分は警視庁、サイバー犯罪課の三堂です」 「警視庁ッ!?」 「佐野修司さん、あなたを不正アクセス法違反および窃盗の容疑で現行犯逮捕します」
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